12月17日、暗号資産市場で対米ドルのビットコインが歴史的な節目「2万ドル」を突破し、過去最高値を再び更新しました。
3月には新型コロナウイルスに伴う経済危機で急落したビットコインでしたが、
- 供給量が減少する半減期
- コロナ禍経済状況のヘッジ資産(金市場と相関)との見方
- DeFiバブルで勢いを加速
- 企業のBTC購入事例や、機関投資家の参入で機関マネーが流入
- PayPalの参入
など以上の理由から個人投資家を中心とした投機的な取引も増加する形となりました。
各国での金融緩和を背景とした空前の金余りが金融市場を下支えする最中、ビットコインの値動きも良く、市場のアピール材料となったのではないかと予想されています。資金の行先を探す機関投資家も増加しつつ、ビットコインが投資先として機能することが分かったことも金融関係者の関心を高めた要因であると言えます。
2万ドル突破後の今月17日は、世界のマスメディア各社がビットコインを報じるなど、バブル崩壊後から撤退していた一般投資家の再参入にも期待感が高まりつつあります。さらに2万1,000ドルを超えるなど騰勢をさらに強めている状況です。また専門家らもすでに3万ドルを超えるのではないかとの見解を示しており、市場に乗り遅れまいとするFOMOで相場が走るシナリオにも注目が集まっています。
まさにここから上の新高値は未知の領域となるでしょう。いわゆる真空地帯には暗号資産史上「上値抵抗線」の存在がなく、青天井となる可能性もあります。一方で大口の利食いで急落するおそれもあり、ボラティリティ大幅上昇による乱高下には注意したい考えです。
2万ドル突破前後に起こった出来事とは?
2021年に差し掛かる中、ビットコイン市場では投資会社のBTC取引が開始され、銀行のカストディ参入とリファレンスプライス含む金融機関のインデックス提供と市場の成熟に向けた動きが加速しました。
インデックス提供についてではCboeとS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが2021年から指数算出開始を予定しており、実現に至らなかったビットコインETFなどの金融商品の誕生も改めて実現が視野に入る状況にあるとのことです。
しかし2万ドル突破前に揉み合う値動きが続いたビットコイン市場では、どのような動きがあったのでしょうか?
企業・機関投資家たちのBTC運用
企業等がビットコイン運用に関心を持ち始めたのは、コロナショックから2ヶ月後に見られたポール・チューダー・ジョーンズ氏のBTC購入などから始まりました。
当時、半減期前の5月12日にヘッジファンド業界のパイオニアでもあるチューダー・ジョーンズ氏がインフレヘッジとしてビットコインに投資する考えを伝えていました。
チューダーインベストメントが管理するチューダーBVIグローバルファンドを通じ、ビットコイン先物を最大「1桁台前半のパーセンテージ」で保有する可能性を示唆し、自身でもビットコインに資金を投じたことを明かしたということです。
またヘッジファンド界においてレジェント的な存在にある同氏の参入を機に、ヘッジファンドの参入や投資運用会社等の機関投資家の参入が続いた格好となっていました。
この動きは、ビットコインが2万ドルを超えた17日前後でも2件見られています。
1つ目はイギリスにある大手資産運用企業Rufferのビットコイン購入に関する情報開示です。2つ目としてあげられるのが、米国の投資企業One River Asset Managementが新設したファンドを通じ、2021年までに1,000億円規模の資金をビットコインとイーサリアムで運用する計画を伝えたこととなっています。
Rufferは、ビットコインが世界の主要通貨の価値低下に対する保険にはなり得るとして、金に投じていた資金ポートフォリオの一部をビットコインに移す考えを示しました。
一方でOne Riverは「この新たな資産クラスへの資金アロケーションは複数の世代間に渡って長期目線で投資するもの。」として、長期目線で資産を購入する考えを示しています。
米国トレンドでビットコインが1位に
また、個人投資家の関心度も飛躍的に上昇しています。
米ドル建の大台を突破したことを受け、米国のツイッタートレンドでは2位にツイート数で大差をつけて1位にランクインしました。さらに一夜明けた今月17日もトレンドでトップ入りしており、「#Bitcoin」に関するツイート数は15万ツイートを超えている状況です。
同現象は日本円建200万円を突破した際の日本でも見られていました。100万円や200万円といった節目価格を迎えたことを受け、マスメディアも大きく報道するとともに、業界外の一般投資家層にも伝わったことで市場の関心が急速に高まる動きに繋がったと言えます。
BinanceとCoinbaseがサイトダウン
また、2万ドル突破前後で取引が活況になる中で海外大手取引所では、複数のサイトダウンが確認されています。
最初に取引所システムのダウンが発生したのが、グローバル取引所最大手のBinanceです。続いて米国最大手のCoinbaseがダウンするという現象が起きました。
これらのサーバーダウンは主要取引所であるほど取引額が大きいことから、大口の仕掛けポイントにもなり得るとして警戒感が高まるポイントになっています。
実際に過去のサーバーダウン中に市場が大きく売られて、取引所復旧後に更に下落する事例も確認されています。
最も有名な事例は2017年の11月29日に起きたものです。暗号資産バブルの中でビットコインが1万ドルを超えて1万1,000ドルまで到達したあとに、Coinbase・Gemini・Bitstampなど主要取引所のシステムがダウンしました。
そのタイミングでビットコイン価格は大きく売られ、フラッシュクラッシュを伴い一時9,000ドルまで高値から20%近く下落した形となりました。
今回も2万ドル突破後に同様の事例が見られたことから市場の警戒感は高まっています。
大手機関投資家は強気予測
現在マスメディアの報道では、ビットコインの強気予想が聞かれています。
総額2,600億ドル超の運用資産を有するグローバル大手資産運用企業グッゲンハイム パートナーズの首席投資責任者Scott Minerd氏が、ビットコインのあるべき価格について企業としての観点を語りました。
ブルームバーグTVに出演したMinerd氏は「グッゲンハイムのファンダメンタルズ分析に基づき、ビットコインのターゲティング価格が40万ドルになる。」と指摘し、現在の価格の20倍弱の水準となるという強気な予測の背景には2つの要素=「希少価値とゴールド価値との関係性」があると説明しました。
希少価値とはビットコインにおける「上限のある発行数」と中央銀行主導の金融緩和による「法定通貨価値の希薄化」に関連するものです。
ゴールド価値との関係性としては国内総生産を占めるゴールドの価値の割合に関係するとし、具体的には「ビットコインは、ゴールドの性質に似ているが、トランザクションのバリューがゴールドよりも非常に高い。」との見解を示しています。
11月、グッゲンハイムはグレースケールのビットコイン投資信託GBTCに最大5.3億ドルを投資する権利を申請しています。また、Minerd氏は自身のビットコイン購入を行なっており、ビットコインに10,000ドル帯のタイミングで一部の資産を充てていたことを公表しています。