近年注目を集めている単語のひとつにアンバンクト(unbanked)、アンダーバンクド(underbanked)があります。
この2つは銀行口座を持っていない、持つことのできない人のことです。
銀行口座がなければ給与を銀行振込にすることや公共料金の自動引き落としができません。クレジットカードやデビットカードなどのカード類の使用も難しいです。
そんなアンバンクトに仮想通貨を含めたさまざまな業界が関心を寄せています。今回はアンバンクトと仮想通貨の関係性について解説します。
アンバンクトと仮想通貨の関係性
アンバンクトに注目が集まる理由
アンバンクトの数は世界で20億人以上とも言われています。世界人口の4分の1近くが何らかの理由で銀行機関の口座を持っていない、あるいは持つことが出来ていないわけです。
アンバンクトが注目されている理由のひとつは20億人以上ともいわれる人口の多さです。世界最大の人口を誇る中国でも13億人、次点のインドの人口は9億人と言われています。
アンバンクトの数は中国とインドを合わせた数に相当します。これだけの人口を取り込めれば、一大産業に発展する可能性を秘めています。
資金面で考えるとアンバンクトは、富裕層には勝てないかもしれません。しかし人口が多いということは雇用が見込めます。給与の支払いや送金という面で大きな意味合いがあります。
アンバンクトは発展途上国を中心に広がっていると言われていますが、先進国の中でも多数のアンバンクトを抱えている国は存在します。アメリカでは全体の3割がアンバンクト、あるいはアンダーバンクトという調査結果が出ています。
アンバンクトが注目される2つ目の理由がスマートフォンなどのモバイル端末の存在です。モバイル端末保有者の数は世界で50億人を超えたと推測されています。国によって差はありますが、アンバンクトであってもモバイル端末は保有しているという人も少なくありません。
こうしたモバイル端末を持っている人であれば、アンバンクトであっても決済サービスのアプリを使うことで支払いや送金が可能になります。
仮想通貨に関しても同様に、モバイル端末にウォレットアプリを入れておけば取り扱いができるわけです。
アンバンクトの可能性
アンバンクトには世界最大手の通信販売サイトのアマゾン(amazon)も注目しています。
アマゾンでもアマゾンキャッシュ(Amazon Cash)という金融サービスが2017年に開始されました。これはデビットカードやクレジットカードが無くとも、アマゾンの商品が購入出来るというサービスです。
商品購入に使うキャッシュはバーコードを読み取ったり、携帯電話番号を使って識別したりします。後は提携店に行って入金するだけです。
2019年4月段階での提携店の中にはコンビニエンスストアのデイリーヤマザキやドラッグストアのウェルシアなど広い地域に渡って店舗を展開しているチェーン店の名前も複数存在します。
なお元々アマゾンでは金融商品を取り扱っています。2014年には法人向けの融資サービスとしてアマゾンレンディング、2018年にはアマゾン以外でもアマゾンのアカウントに登録した配送先やカード情報を利用できるアマゾンペイというサービスを提供を始めました。
アマゾンレンディングとは簡単に言うとローンです。アマゾンのアカウントから自動的に引き落とされるシステムで最大5,000万円まで借りることが出来ます。
中国やインドでのモバイル決済サービス
人口の多い中国やインドでもモバイル決済サービスは進んでいます。中国では大手通信販売サイトのアリババ(Alibaba)が提供しているアリペイ(Alipay)や中国のSNSであるウィーチャット(WeChat)が提供しているウィーチャットペイ(WeChatpay)が普及しています。
Facebookの子会社であるワッツアップ(What’sApp)は、ワッツアップペイメント(What’sApp Payment)というモバイル決済サービスを始めました。
2018年2月にインドで ワッツアップペイメントのテストは行われました。インドは世界人口第2位であると同時に、2億人以上がワッツアップを利用しています。
ただし2019年4月段階のこれらのサービスは銀行口座が必要です。まだアンバンクト向けとは言えません。
アンバンクトと仮想通貨
仮想通貨の強みは、銀行口座を持てない人でも口座を持つことができる可能性があるためです。
ただし近年は仮想通貨であっても本人確認(KYC)やマネーロンダリングなどへの対策(AML)の強化が行われています。アンバンクトでも本人確認などができるようにする必要があります。
また仮想通貨の中には既にアンバンクトを対象とした保険サービスを提案しているものが複数あります。この保険サービスが実現すれば、さまざまな方向にアンバンクト向けサービスが広がっていく可能性が生まれるでしょう。
まとめ
アンバンクトは仮想通貨だけではなく、さまざまな業界が目を向けています。しかし銀行口座を持っていないということは、何らかの理由があるためです。
どのような形で顧客の本人確認を行うのか、どのようにすれば顧客が円滑にサービスを利用できるのか仕組みつくりから考えていくべきでしょう。