2019年7月現在、数多くの仮想通貨が存在します。仮想通貨の分析・情報サイトであるコインマーケットキャップ(coinmarketcap)に掲載されている仮想通貨の数は、2200種類を超えているほどです。
しかし全ての仮想通貨がゼロから作り出されたわけではありません。既存のフレームワークを利用している銘柄も多く存在しています。
今回は多くの仮想通貨が利用しているフレームワークERC20について解説します。
ERC20とは
ERC20とはイーサリアムに付いている機能のひとつです。
イーサリアムにはスマートコントラクトという機能がついており、スマートコントラクトを応用方法が考えられていました。ERC20もそのひとつです。
ERC20はトークン作成を補助するフレームワークになります。仮想通貨をつくるということは、仮想通貨の基盤ともなるブロックチェーンの作成・維持・運営をしなければなりません。
しかし無からブロックチェーンをつくるのは簡単ではなく、またトークンの開発目的自体も必ずしもブロックチェーン開発とは限りません。ERC20ならばブロックチェーンを作成せずにトークン作成を行うことができます。
ERC20の特徴
ERC20で作成されたトークンは、イーサリアムのブロックチェーンが利用されます。ここで特徴的なこととして、個別の仮想通貨として管理されているということです。
多くの仮想通貨では、1銘柄に1つのブロックチェーンが使用されています。逆にいうと1つのブロックチェーンで複数の仮想通貨を同時に管理するには、特殊な仕組みが必要です。ERC20は、この特殊な仕組みを導入していることがERC20最大の特徴といえます。
1つのブロックチェーンで管理していることのメリットは、投資家側にもあります。
仮想通貨を保有するためにはウォレットが必要です。ただし銘柄によってブロックチェーンが異なる場合は、ウォレット側も保有する銘柄に合わせてブロックチェーンに対応しなければなりません。
しかしERC20トークンは全て同じブロックチェーンで管理されているため、ERC20対応のウォレットであれば全て個別に複数同時管理が可能になります。銘柄ごとにウォレットを変更しなくて済むというのは、投資家にとって大きなメリットです。
またイーサリアムのトランザクションを管理できるサイトであるイーサスキャン(etherscan)を使うと、ERC20トークンのトランザクションも全て確認することが出来ます。これも大きなメリットのひとつです。
ERC20のデメリット
ERC20のデメリットもまたスマートコントラクトを利用していることです。スマートコントラクトを最大限に利用するためには、さまざまな情報を包括的に処理しなければなりません。
そのためスマートコントラクト自体がイーサリアムのデータ処理能力の障害となっているわけです。
この状況を改善するためにイーサリアムはシャーディング(sharding)という仕組みの導入を検討しています。シャーディングとはトランザクションを細かく分割することで、ひとりひとりのマイナーの負担を減らそうという仕組みです。
この他のデメリットとして、ERC20自体がスマートコントラクトのアップデートに対応出来ていないことがあります。このデメリットを改善するために、ERC223・ERC721・ERC1155などERC20以降もトークン作成機能を持つ仕組みが作り出されています。
イーサリアムから独自ブロックチェーンへの以降
ERC20トークンであっても、永久的にイーサリアムのブロックチェーンを使わなければならないというわけではありません。
開発段階ではイーサリアムのブロックチェーンを利用し、独自のブロックチェーンを開発した後で移行するという仮想通貨も存在します。
イオス(EOS)やバイナンスコイン(Binance Coin/BNB)などは実際に独自のブロックチェーンへと移行しています。
またバイナンスコインの使っているブロックチェーンであるバイナンスチェーン(Binance Chain/BNP2)には、バイナンスコイン以外の仮想通貨も移行可能です。
実際に中国経済や資本市場をカバーするためのプラットフォーム制作を目指す仮想通貨レッドパルス(Red Pulse/PHX)がバイナンスチェーンへの移行を発表しました。
レッドパルスは中国のイーサリアムと呼ばれるネオ(NEO)のトークン作成機能NEP5を利用して作成された仮想通貨です。
ただしブロックチェーンを以降すると、同じ銘柄の仮想通貨でも別物として認識されることになります。そのために回収したり統合したりする仕組みが必要です。
まとめ
イーサスキャンを確認したところ、ERC20で作成されたトークンは約20万種類にも及びます。チェーンリンク(ChainLink/LINK)やメイカー(Maker/MKR)など時価総額上位の銘柄もERC20トークンです。
ただしERC20トークンならではの問題も抱えています。これらの問題にどのように対応していくかが、これからのERC20トークンの命題となるでしょう。