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暗号資産市場:大幅に安値を記録した原因とは?

12月8日の暗号資産市場において ビットコイン価格は、前日比4.82%安の189.8万円と大幅下落しました。

下落の原因は?

今回のビットコイン下落要因としては、主に以下の点が挙げられています。

  1. 心理的節目からの達成感
  2. 保ち合いにおける下抜け
  3. デリバティブ市場での需給
  4. アルト急騰と目先材料の出尽くし

今年10月以降の上昇相場では米決済大手PayPalの事業参入をはじめ、上場企業や機関投資家の相次ぐ参入報道など極めて強いファンダメンタルズに支えられ、急落の度に即反騰傾向にあったものの、ビットコインは今回2万ドルの節目を目前にして反落しました。

しかし、ここにきて風向きは変わりつつあります。その要因となっているのがATH(All Time High)を更新した主要取引所における、機関投資家とクジラ(大口投資家)の利益確定売りです。

直近、強気相場で利益が膨らんでいることが予想されている最中、クジラの資金移動を示す取引所へのインフロー増加や大手取引所における19,300ドル上の売り板の厚さなどが指摘されていました。また、薄商いとなる年末年始相場に向けた「税金確定売り」もあるものと予想されています。

新型コロナで深刻な打撃を被る”実体経済”と乖離して、米ニューヨーク株式市場や東京株式市場は高値更新を続けています。しかし大きな調整が訪れるようなことがあれば、ビットコインなど暗号資産市場も巻き込まれるリスクは否めません。コロナ禍で物色されていたマザーズなど新興市場のグロース銘柄から大型バリュー株への資金移動も確認されており、すでに一部のヘッジファンドや個人投資家は市場から資金を引き揚げつつあります。

クジラの撤退行動

11月30日、データ分析企業CryptoQuantのKi Young Ju CEOは目標ラインに達した”クジラ”の撤退行動を指摘しました。

この指摘の根拠にあるのは独自指標である「Exchange Inflow Mean(MA7)」です。

過去3年間のオンチェーンデータを確認すると、過去7日間平均の入金額が0.5BTC未満に下落している局面は、まとまった資金を投じるクジラの減少と個人投資家比率の増加を示唆しています。

テクニカル分析

BTC/USDチャートを確認すると、10日間かけて形成した保ち合いをブレイクする結果となりました。また反発局面でロールリバーサルしており、短期的なトレンド転換を示唆している状況です。

一方、18,000ドルの心理的節目で300ドルほどの反発もみられており、リスクファクターを鑑みながら目下18,500ドル上を回帰できるかが焦点となることが予想されています。12月安値の18,000ドルで押し目との見方が強まれば大幅反発の目もあり得るものの、底抜けた場合17,400ドル、あるいは16,300ドル付近のサポートラインまで一段安となる恐れも可能性としては残るものの、そうなれば新規市場参加者のパニック売りが警戒されることとなります。

どこで下げが止まるかの判断は難しく、日足・週足確定ラインなど慎重に見極める必要がありそうです。

デリバティブ市場では過熱感も

クリプトアナリストの仮想NISHI氏は今月7日の市場動向について、アクティブ未決済建玉やFundingRateの増加、先物市場のBasis上方乖離に言及し、デリバティブ市場における過熱感の拡大を指摘しました。

また19,000ドルを超える高値圏で揉み合う中、デリバティブ市場でのロング増加を示唆しており保ち合いを底抜けたことで狼狽売りが加速した可能性があるとのことです。

ここでのベーシスとは現物価格と先物価格の価格差のことを指しています。ベーシスの乖離局面についてBitMEXの元CEOアーサー・ヘイズ氏は「熟練の投資家が現物を買い、先物を空売りしプレミアムを稼ぐ傾向になりやすく、テクニカル的な山場を迎えた後のベーシスの上方乖離は天井シグナルの1つを示す。」と述べています。

bitFlyerなど国内取引所でも、デリバティブ先導の上方乖離が膨らんでおり、デリバティブ市場の沈静化は、反転の目を伺うにあたり1つの目安となるとの声が上がっています。

ここ数ヶ月間で、暗号資産市場の投資家心理は一変しました。

ETHやXRPが高騰するなどアルト市場への資金流入も増加傾向にあります。その反面、短期的な過熱感から大口の利益確定売りを促した可能性が高くなっているのも事実です。

イーサアリアムは大型アップデートETH2.0の「ビーコンチェーン稼働」という歴史的節目をすでに迎え、相場が一服しました。XRP関連ではSparkトークン付与の「権利確定日」が今月12日に迫る中、材料出尽くし売りに押されることも懸念されています。

今月4日、国内事業者12社はXRP保有者へのSparkトークン付与を予定するFlare Networks社とは基本的合意に至ったものの、「22年6月12日までに日本暗号資産取引業協会金融庁に上場承認された場合、Sparkトークンを請求しXRP保持者に分配する。」との条件が盛り込まれています。これについては規制当局との兼ね合いで、国内マーケットではすぐに取り扱うことができない可能性が生じています。

中・長期はポジティブに

しかしコロナ禍における世界経済の立て直しが、今後数年間に渡る主要トピックとなることは市場コンセンサスとして定着しつつあることは事実です。米ドルや日本円などの法定通貨が大規模量的緩和におけるインフレーションで徐々に価値を失う中、金同様の代替資産性が認められつつあるビットコイン市場には追い風と言えます。

今後さらなる調整局面が訪れた場合、買い場探しの機運が強まるものと予想されています。