昨年9月に発表された欧州連合(EU)の包括的な暗号資産規制案(MiCA)に対し、いくつかの点で改訂が提案されたことがスペインの経済紙Cinco Diasの報道で判明しました。
報道によると改訂案ではNFTが規制の対象から外れ、EU域内を対象に暗号資産サービスを提供する企業は拠点をEU加盟国内に置くことが求められると改訂されています。これに伴い、規制当局による承認も必要となることが加えられました。
事業の承認ではブローカーなど暗号資産投資サービスを行う企業は最初から申請をやり直すことが求められるものの、銀行に対して優先的に本事業を認可する方針に変更は見られていません。
これに伴い、スペイン国内では欧州中央銀行をはじめ、同国の中銀であるスペイン銀行とスペイン証券取引委員会(CNMV)が暗号資産関連事業の監督を担うことが発表されています。
NFT除外の背景とは
今回の改定案でNFTを規制の対象外とするのには以下の理由があります。
これらの暗号資産は市場での取引、投機的蓄財、限定的な交換手段として使用されることはあるものの、容易に交換できるものではない。
暗号資産の定義が問題に
NFTを除外したことで再浮上したのが暗号資産の定義についてです。MiCAでは暗号資産、ユーテリティトークンや資産参照トークン(ART)、Eマネートークンなどの用語について対象となるビットコインやDAI、Diemなどの例を挙げて説明しています。
しかしECBは2月に提出されたMiCAに対する意見書で、国ごとの多様な解釈を避け、EU全域で「調和の取れた規制の確立」を実現するため、EUに「暗号資産とは何か」や、「MiCAの対象の決定」「どの規制当局が対応すべきか」などついてより明確に定義するよう求めています。
またECBはデジタルユーロなどの中央銀行デジタル通貨(CBDC)については、MiCAの対象から除外するように求めている状態です。
ステーブルコインへの対応
改定案の中でECBが特に厳格な対応を求めたのがステーブルコインの対応です。
同行はステーブルコインが「決済システム/スキームに等しいものである時、金融政策の遂行・決済システムの円滑な運用に対する潜在的な脅威評価は、ECBの独占的な権限に属するべきである。」と記載してり、トークン承認の拒否権を求めています。
規制案の完成には4年かかるとの声も
Cinco Diasはこの規制案の完成時期について、2021年末または2022年初頭までを目処にしていることを明らかにしました。
しかしながらEU全体が対象となるMiCAは、すでに各国・地域ごとに実施されてい現行の暗号資産規制に優先することになるため、規制の整合性を保つための手続きの詳細や、担当規制当局の調整などの課題は多く残っているということです。
多くの国と組織を抱えるEUではMiCAが正式に法律として採用されるまでに、4年ほどの期間を要するとの声も上がっており、実際に導入が行われるのは2024年頃が最も現実的です。
一方、昨年に分散型金融が爆発的な急成長を見せたことを受け、2024年の市場の状況がどうなるのかが誰も予想できないという点も課題になるということです。