ICO

サトシ・ナカモトはICOを想定していたか?

現在仮想通貨とICOは切っても切れないような関係にあり、金融業界やIT業界で世界中を混乱させている。詐欺は横行し、非中央集権的テクノロジーは共産主義国を脅かし、数々の夢のようなブロックチェーン技術を使ったプロジェクトはただの夢物語に終わっている。友人に仮想通貨の話をすれば、そんな怪しいもの扱っているの?と言われる始末。正直言って、仮想通貨とICOの評判は少なくとも私の周りでは、良くない。でもそれは今だけかもしれない。新しい技術や考え方は初めは敬遠されるということは歴史が物語っている。

ブロックチェーン技術と人の未来

先日参加した勉強会でパネルディスカッションに登壇された篠原ヒロさんは、ブロックチェーン技術を信頼しきっており、あらゆる中央集権的なものを身の回りから排除しようとしていた。彼は家を持たず、銀行口座を持たず、Airbnbで転々と暮らしている。そして自分の生活全てをブロックチェーン技術でまかなおうとしている。例えば婚姻届はブロックチェーン上で受領されればよいという画期的な方策を話していた。政府とは相容れないであろう、ブロックチェーン技術で中央集権ぶっ壊せ!くらいの過激なレジスタンス的要素の持ち主だった。

しかしそこには夢がある。ブロックチェーン技術による最先端の生き方を彼は体現しようとしている。テクノロジーさえ進化し続ければ、誰もがテクノロジーを信頼できれば、そして中央集権の人間は不要だと思えれば、篠原さんのような生き方は皆にとって現実的になるかもしれない。

彼は自らをビットコイン・ブロックチェーンオタクと称しているが、彼の生き方を聴いて、ブロックチェーンノマドエンジニアだと思った。昨今の働き方改革ブームで様々な取り組みをしている企業も多いが、彼ほど自由に働く人間を私は知らない。

このように、人一人の生活を激変させるほどの力を持つブロックチェーン技術だが、サトシ・ナカモトはICOが生まれることを想定していたのだろうか。単なる決済システムのはずのビットコインがこれほどまでに人に夢を見させると考えただろうか。ICOは人の生活を救う、人類を救う、あらゆる問題を解決できる。正確にはICOは資金調達方法であり、プロジェクトの要はブロックチェーン技術で、それが人々を救うのだが。

世界初のICO

世界初のICOは2013年7月に行われた、Omni Layerによる仮想通貨Mastercoinによるものだった。

Mastercoinはビットコイン(Bitcoin/BTC)取引所設立、トランザクションを行うためのプラットフォーム設立といったプロジェクトを実現することを目的とし、当時日本円にして約7000万円($600,000USD)を調達しました。この計画は2012年1月、J. R. Willett氏がMastercoinのホワイトペーパーを作成したことから始まりました。彼は、ビットコインの根本的構造を変えることなく、そのプロトコルに従い新たなコインの持つ新しいルールを実装することの可能性を定義しました。この事例を機に、多くのICOが行われるようになっていきました*1。

今でも、ICOといえば仮想通貨の取引や決済にかかわるものが多いが、ブロックチェーン技術を使って医療の実態を根本的に変えるなどという、金融に全く関係のない画期的なプロジェクトも多数存在する。それらが実際に実現するかどうかは別問題として、ICOが今後も大きな広がりを見せていくことは間違いない。それに伴う規制も拡大されるだろうが。

人間が作り出したテクノロジー

しかし私が少々気になったことは、サトシ・ナカモトという”人間”が作り出したシステムの上で仮想通貨とブロックチェーン技術は成り立っており、ブロックチェーン技術を応用して自動化やセキュリティ面の向上を目指すICOが多いが、結局人が作り出すということだ。テクノロジーそのものが生み出した完璧なシステムではない。中央集権的側面が今はまだ限りなく排除されている仮想通貨とICOも、結局は人が作り出している。テクノロジーを完全に信頼できる時はまだまだ先だということだ。なぜなら、人はヒューマンエラーを必ず起こす。完璧なシステムが構築される日が来るまで、私達はICOを見守らなければならない。

サトシ・ナカモトはこれほどまでにICOが様々な領域で盛り上がりを見せるとはきっと想定していなかっただろう。しかし、彼/彼女の願いは、ICOのような形で人類を救うことだったのではないだろうか。

引用元*1:https://consensysmediajapan.com/3536.html#chapter-4