クリプトピア(Cryptopia)とはニュージーランドに存在した仮想通貨取引所です。かつては100種類以上の仮想通貨が取引されていました。
しかし2019年6月現在、クリプトピアのウェブサイトでは仮想通貨の取引は出来ません。掲載されているのはクリプトピアの破たんと清算状況の報告のみです。
今回はクリプトピアが破たんした理由について解説します。
クリプトピアとは
クリプトピアは2015年にニュージーランドのクライストチャーチに事務所を構えました。ビットコインやイーサリアムといった代表的な銘柄を抑えつつ、余り他の取引所では上場していないような種類の仮想通貨も複数上場していました。
2019年1月にツイッター上にあるクリプトピア公式アカウントが投稿した動画によると、2018年のクリプトピアには113銘柄が新規上場、新規ユーザー100万人以上、基礎取引高91億ニュージーランドドル(約6,500億円)と報告されています。
チャリティーにも貢献しており、150万ニュージーランドドル(約1億円)は寄付やスポンサー提携に投じられていました。
エアドロップなどのイベント対応も行っており、大手取引所では取り扱っていない銘柄を応援できる取引所のひとつです。
しかし一方でセキュリティーや設備面では不安を残していました。ログインできなかったなどの理由から集団訴訟も受けています。
そして2019年1月には大規模なセキュリティ侵害を受けることとなりました。
クリプトピアのセキュリティ侵害
2019年1月15日、クリプトピアのツイッター公式アカウントが重大な損失となるセキュリティ侵害があったことを認めました。
ツイートの中ではニュージーランド警察やハイテク犯罪対策部隊を含めた政府機関が出動したことも報告しています。このあたりからクリプトピアは既に取引を停止し、長いメンテナンス期間へと入りました。
ただしこのセキュリティ侵害には2つ不明確点が残されています。ひとつはセキュリティ侵害による被害額・被害を受けた銘柄・被害を受けた原因などについての公式発表が行われていないことです。
セキュリティ侵害が発生したからといって、必ずしも被害額や被害原因などを公表しなければならないという義務は存在しません。そのためクリプトピアの対応に法律上の問題点を見つけることは難しいです。
しかしクリプトピアの対応にユーザーが納得するかどうかは別問題となります。
もうひとつの不明点は、セキュリティ侵害対策に関する報告間隔が開きすぎていることです。最初のセキュリティ侵害報告が1月15日、翌日となる16日には警察との状況共有を行っているというツイートがされています。
しかしこの後からツイートは毎回10日以上の間隔が開くようになります。16日のツイートの次は27日にツイートで状況を報告、27日の次は2月14日、14日の次は26日と、ユーザーに対する情報共有が滞っています。
セキュリティ侵害が報告されてから2月26日までの約1ヶ月半の間に行われたツイートは4回に留まりました。
この2つの不明点もあり、クリプトピアのセキュリティ侵害は自作自演ではないかという疑惑まで寄せられています。
なおニューヨークに拠点のある国際的ブロックチェーン分析会社であるエレメンタスは、クリプトピアはハッキングされたと指摘しています。
エレメンタスのブログによると被害額は、イーサリアム約250万米ドル、デンタコイン約245万米ドル、オイスターパール約195万米ドルなど合計1,600万米ドル相当のイーサリアム及びERC20トークンが盗まれたと分析しました。
セキュリティ侵害の余波
ハッキングなどのサイバー攻撃の問題点は、ひとつの仮想通貨取引所で完結しないところです。追跡をかいくぐるために複数のアドレスに分け、別の取引所へと送金し、別の銘柄と取引するなどの手口を使います。つまり他の取引所にも迷惑をかけてしまうわけです。
エレメンタスの報告によるとクリプトピアで盗まれた仮想通貨は、エストニアにある仮想通貨取引所ビボックス(Bibox)やマルタにある仮想通貨取引所バイナンス(Binance)などに送金されたと見られています。
クリプトピア運営再開
セキュリティ侵害報告から約2ヶ月経過した3月17日、ようやくクリプトピアのメンテナンスが完了しバックアップが完了したことをツイッター上で報告しました。
18日から運営再開されていますが、セキュリティ侵害以前の完全な形で運営ではありません。ビットコインやイーサリアムなど40銘柄のみが取引再開となっています。
クリプトピア運営破たん
クリプトピアの破たんが公式に報告されたのは5月15日です。公式ページにて清算人の指定が行われたことを明記しています。
3月18日の運営再開以降、クリプトピアは取引通貨の増加などセキュリティ侵害以前の形に戻すよう務めていました。しかし運営再開から約2ヶ月で運営破たんとなっています。
まとめ
クリプトピア一連の騒動の原因のひとつには対応が後手後手に回ったことが挙げられるでしょう。今回の破たん騒動による補填は数年かかると見られています。
クリプトピアのように、仮想通貨取引所が突如経営破たんに陥ることはあります。取引所に多くの資金を預けすぎないようにしましょう。