2019年12月現在、リップル(Ripple)社との協力体制を繋いでいく金融機関は増えてきています。リップル社との協力には、より簡単に送金できるリップルネット(RippleNet)・必ずしも金融に調節しない分野に投資を行うスプリング(Xpring)など複数の形があります。
リップルネットを支えている技術のひとつがオンデマンド流動性(On-Demand Liduidity)です。今回はオンデマンド流動性の概要や導入するメリット・デメリットについて解説します。
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オンデマンド流動性とは
オンデマンド流動性とは、外貨の準備をサポートすることです。例えば日本からアメリカに日本円を送金できるサービスを提供する場合、アメリカの金融機関は日本円で顧客に支払う必要があります。同様にアメリカから日本に米ドルの送金サービスを始める場合にも、日本の金融機関が米ドルを用意しなければなりません。このような外貨の準備をサポートすることがオンデマンド流動性の特徴です。
かつてはxCurrentや xRapid という名称だった
リップルの送金を支える技術として以前から、xCurrent・xRapid・xViaというものがありました。
しかしこれらの単語は現在リップルの公式サイトからも姿を消しています。代わりに登場したのがオンデマンド流動性です。オンデマンド流動性とは、xCurrent・xRapid・xViaの技術のを引き継いだ仕組みです。
従来の送金方法
国際送金をするために従来の金融機関では、スイフト(SWIFT:Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication )という方法を使っていました。日本語だと国際銀行間通信協会と訳されています。協会という名称になっていますが、非上場の株式会社です。ベルギーに本社があります。
スイフトには時間がかかる・手数料が高い・トラブルに巻き込まれる可能性があるなどの指摘がこれまでにもありました。これはコルレス銀行という仕組みを使っていたためです。
コルレス銀行とは
コルレス銀行とは国際送金をする時に中継点となる銀行のことです。特定の銀行を示す名称ではありません。英語ではCorrespondent Bank、コルレスとはコーレスポンダント(特派員、通信員)などから来ています。
国際送金をする時には、1つではなく複数のコルレス銀行を経由することもあります。送金元をX、送金先をYとすると、X→A→B→C→Yなどのように複数のコルレス銀行A・B・Cを使うわけです。
コルレス銀行を使うメリット
一見面倒くさそうに見えるコルレス銀行の仕組みですが、銀行側にとっては取り扱う外貨の種類を制限できるというメリットがあります。上の例にあるX→A→B→C→Yを例にとると、AはCやYの外貨を取り扱う必要はありません。保有する外貨の種類を制限することで、相場の下落などのリスクを減らすことができます。
コルレス銀行のデメリット
コルレス銀行のデメリットは、ユーザー側と銀行側の双方にあります。ユーザー側のデメリットは、時間がかかることと手数料がかかることでしょう。コルレス銀行の数が多ければ多いほど、送金にかかる手続きが増えて時間が必要になります。またすべてのコルレス銀行に送金手数料を支払わなければならないので、その分だけ手数料が割り増しされることになります。
銀行側にとってのデメリットは、トラブルが発生した時に対応が難しいということです。どのタイミングでトラブルが発生したのか全てのコルレス銀行に確認をとる必要があります。複数のコルレス銀行が関わる送金でトラブルが発生した時には、一切ミスがなかったにも関わらずトラブルに巻き込まれる銀行も登場するわけです。
オンデマンド流動性導入のメリット
このような外貨準備サポートを始めるにあたり難しいことは、どの程度の外貨を用意するべきかというところにあります。外貨準備といったサービスは、どの程度顧客にニーズがあるのか判断が難しいです。数多くの顧客が一度に外貨を求めるといったケースは考えにくく、しかし1人が相応数の外貨を求めるケースは十分に考えられます。
このような判断が難しいケースにも対応できることが、オンデマンド流動性のメリットです。
オンデマンド流動性導入のデメリット
オンデマンド流動性を導入するデメリットは、自社で同様のサービスを立ち上げることが難しくなることでしょう。金融機関でも収益を上げることは重要な要素です。そのためには今後外貨に関する新しいサービスを立ち上げることも考えられます。あるいは自社で十分な外貨を用意できる金融機関であれば不要でしょう。
まとめ
オンデマンド流動性は、数多くの金融機関が感じている悩みを解決する力を持ったサービスです。既に導入を発表しているアメリカの送金機関であるマネーグラム(MoneyGram)は、オンデマンド流動性で既に大きな収益を上げています。今後も取引先を増やすためにオンデマンド流動性を導入する送金機関は、増えていくでしょう。