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中東リスクから見る暗号資産の必要性

暗号資産の価値は人それぞれです。政府の影響を受けにくい避難通貨として優れているという評価している人もいれば、安価な送金手数料を利点と考える人もいるでしょう。あるいは暗号資産そのものより、基幹技術であるブロックチェーンの方を認めている人もいるかもしれません。

2020年1月、アメリカの攻撃により中東リスクが一気に高まりました。今回はこの中東リスクから暗号資産の必要性を考えます。

中東の成り立ち

元々中東は、メソポタミア文明という古くから文明の栄えた土地でした。チグリス川とユーフラテス川という2大河川があり、周辺にある肥沃な土壌を生かした農業が行われたと見られています。

しかし肥沃な土壌は、同時に火種にも繋がります。多くの文明が登場し、そして文明同士の戦争が度々発生しました。時にはヨーロッパやアフリカの一部にまで文明が広がっています。

東ローマ帝国とオスマン帝国

中東は、ヨーロッパからの影響を受けることもありました。東ローマ帝国時代にはシリアが東ローマ帝国の領土となっています。しかし時代の流れとともに支配者も移り変わり、東ローマ帝国もオスマン帝国によって滅亡しました。

なお東ローマ帝国とオスマン帝国は、ビザンチン将軍問題として今でも例題に挙がることがあります。

中東リスク上の注意

EUに加盟しているトルコは、話題によってはヨーロッパとして扱われることもあります。しかし中東リスクに関しては、トルコも中東として扱われることが多いです。

中東リスクの問題点

中東は歴史的にも古く、さまざまな文明が登場・滅亡を繰り返しました。このため中東リスクには、さまざまな思惑や問題が入り混じっています。よく取り上げられるのはイスラエルおよびイスラエル周辺です。

しかしイスラエル以外にも、イスラム教のシーア派とスンニ派の問題やアメリカの介入などで事態は複雑化しています。

中東リスクと暗号資産の関係

このようなリスクを抱えていることを背景に、イスラエルやトルコでは暗号資産に対して期待が寄せられています。イスラエルにはITやブロックチェーン関連の企業も多く、更に増加している傾向にあります。またトルコでは、国民の5人に1人が暗号資産に関して興味を示しているという調査結果もあります。

このようなデータから大手の暗号資産取引所であるバイナンスは、トルコの法定通貨であるトルコリラで直接ビットコインなどの暗号資産を購入できるサービス提供を開始しました。

しかし暗号資産には、マネーロンダリングや反社会的勢力の資金源になる危険性もあります。このためイスラエルでは、2020年1月にレッドフラッグ(危険信号)というガイドラインが一般公開されています。

避難通貨としての必要性

暗号資産には避難通貨としての側面もあります。もしアメリカとイランが戦争状態に入れば、両国とも経済的な影響は避けられません。実際に為替や株にも大きな変動が見られました。また元祖避難通貨である金や中東が大きな利権を握っている原油でも大幅な高騰が確認されています。

2020年1月の金の相場

2020年の金の東京市場は1月6日から始まりました。この日の始値は金1gあたり5,303円です。しかし1日の間に高騰し、終値は1gあたり5,473円となっています。1月8日には1g5,574円を記録しています。

2020年1月の原油の相場

ニューヨークマーカルタイン取引所に上場しているWTI原油(West Texas Intermediate:アメリカのテキサス州西部で算出される原油)は1月8日から高騰しています。前日の1月7日の最高値は63.58ドル(約6,950円)でした。しかし1月8日の最高値は65.62ドル(約7,150円)まで上がっています。

2020年1月のビットコインの相場

ビットコインも中東リスクの影響を受けて高騰しました。イランのソレイマニ司令官の一報が入った4日から高騰を始め、1月8日には1BTC=91万円を超えています。その後一旦相場の膠着状態に入りましたが、高値方面へと抜けました。14日には1BTC=97万円を記録しました。

高騰開始時点のズレ

金や原油は1月8日から高騰を始めています。これに対してビットコインは、1月4日から高騰の兆しがありました。この到達開始時点のズレは、取引時間と地域差に原因があるとして考えられます。

金や原油といった従来の金融商品は、取引時間や取引曜日が限られています。複数の取引所を連結させる外国為替ならば24時間取引を行うことも可能ですが、土日は取引していません。また流動性が高い時間も限定的です。

これに対しビットコインなどの暗号資産は、24時間365日取引可能です。また暗号資産業界のニュースには敏感に反応します。しかし今回の中東リスクでの相場の値動きを見ると、金や原油とは違う値動きをしていると言えます。この原因は、ニュースに対する投資家の反応速度の違いでしょう。

まとめ

暗号資産の必要性は、今後の産業および避難通貨としての可能性です。信頼度が高いとは言えない法定通貨を使用している地域では、今後も暗号資産の開発や研究は進んでいくでしょう。また避難通貨としての可能性は、地政学に詳しい機関投資家がどれだけ参入してくるかによるところが大きいと予想されます。