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トークン速度とは

暗号資産を管理するためには、総発行枚数・循環サプライ・流動性など複数の観点から全体像を捉えなければなりません。加えてこれらの観点の中には、場合によって観点同士で矛盾を含むことさえあります。今回はそのような観点の中でもトークン速度(トークンベロシティ)について解説します。

トークン速度とは

トークン速度とは、それぞれの暗号資産がどの程度動いているかということです。頻繁に取引あるいは交換されている場合は、トークン速度が高くなります。逆に交換せずに保有する人が多い場合は、トークン速度は遅くなると見なされます。

トークン速度は遅い方が価格は上がりやすい

トークン速度は、暗号資産の相場と密接な関係があります。トークン速度が速いということは、売る人も買う人も多いという意味でもあるためです。売る人と買う人が双方同じ程度であれば、価格の値動きは限定的になってしまいます。

逆にトークン速度が遅いということは、売る人か買う人のどちらかに偏っている状態です。売る人が多い状態で偏れば、暗号資産の相場は下落する可能性が高くなります。逆に買う人が多い状態だと、高騰しやすいといえるでしょう。

トークン速度と流動性

トークン速度と同時に考えなければならないのが流動性です。この2つは一見矛盾しているようにも見えますが、近しい観点という見方をすることも出来ます。

暗号資産の価値を高めたいのであれば、トークン速度は遅い方が望ましいです。しかしトークン速度が遅くとも流動性が伴っていなければ、高騰には繋がりません。トークン速度を語るためには、一定以上の流動性が保たれていることが条件になります。

トークン速度を遅くするためには

トークン速度を遅くするためには、大きく2つの方法があります。ひとつは循環供給数を減らすこと、もうひとつが保有者1人あたりの保有枚数を増やすことです。

供給数を減らす方法

20201月段階で供給量を減らす方法として代表的なものはバーン(burn、燃焼、焼却)でしょう。最大供給数自体を減らすことで、市場に出回っている循環供給数も減らすという作戦です。

バーンの利点

バーンの利点は、市場に出回っている流通量を測定した上で計画的に最大供給数を減らすことが出来ることです。世界的大手の暗号資産取引所であるバイナンスでは、独自の銘柄バイナンスコイン(Binance Coin:BNB)を発行しています。

このバイナンスコインでは、四半期ごとにバイナンスの利益の20%で買い戻してバーンするという計画が発表されています。20201月までに10回のバーンが行われており、10回合計で1,570万枚以上が最大供給数から削減されました。

計画的にバーンが行われていることから投資家も、バーンを考慮に入れて取引を行うことが出来ます。運営母体としても状況に応じて適切な数量をバーンすることが可能です。この計画性がバーンの利点です。

1人あたりの保有枚数を増やす方法

1人あたりの保有枚数を増やす方法は、保有枚数や一定枚数以上で特典をつけるというものです。この特典という面で優れているのは、PoS(Proof of Stake:プルーフオブステーク)というコンセンサスアルゴリズムです。

コンセンサスアルゴリズムの中にPoS(Proof of Stake:プルーフオブステーク)というものがあります。保有枚数や保有年数に応じてマイニング報酬が増えるという方式で、イーサリアムが移行を発表している方式です。

PoSの利点

PoSの利点は、初期の競争力を高めやすいことです。特典が分かりやすいため、始めから大量に買い占める投資家が出てくることも考えられます。ですがPoSには、バーンのように状況に合わせた調整が出来ません。ここがPoSの問題点とも言えます。

特典をつけることによる問題点

特典をつけるには大きく2つの弊害があります。1つは先行者利益が大きくなりすぎること、2つ目は有価証券として判定される可能性が上がることです。

先行者利益の問題点

保有枚数ごとに特典を大きくする場合には、先行者利益の大きさを考慮しなければなりません。ある程度大きくなければ、保有しようという投資家は減ります。しかし小さすぎれば、後々新規に保有しようという投資家が減ってしまいます。

有価証券の問題点

暗号資産を運営する上で、有価証券と見なされることは大きなマイナスです。有価証券と見なされた場合には、既に規定されているさまざまな法律などに遵守しなければならないためです。

有価証券の多くは、保有者に配当を配布しています。暗号資産でも特典を配布すると、有価証券と見なされる可能性が否定できません。これが特典をつける問題点といえます。

まとめ

暗号資産の将来性を占う上でトークン速度は、今後重要な視点となるでしょう。しかし闇雲にトークン速度を下げようとする銘柄は、返って苦しめられる危険性も抱えています。特に大きな特典をつけようとする暗号資産には、注意が必要かもしれません。