COLUMN(コラム)

仮想通貨の取り扱いで必須なガスの意味とは?

トピック

仮想通貨にはガスという独特の概念があります。英語でGASのためにそのままガスと呼ばれることも多いですが、燃料などと訳されることも多いです。今回はガスの意味や必要性について解説します。

ガスとは

ガスとは仮想通貨のシステム使用料です。
法定通貨でいうところの手数料や使用料に近い概念になります。仮想通貨を取引所やウォレットから送金する時に必要となる手数料もガスで計算されています。
ただし仮想通貨のガスと法定通貨の手数料には大きな違いがあります。仮想通貨の概念とガスの考え方には矛盾があるためです。

仮想通貨の概念とガスの考え方の矛盾

仮想通貨の目的のひとつが価格を上げることです。ここに仮想通貨とガスに大きな矛盾があります。仮想通貨の価格が高くなると、連動してガスの価格も高くなるためです。
仮想通貨の価格が高くなると保有者の資産価値が高まります。

価格が高くなることにマイナス要素は少ないです。しかしガスは高くなると仮想通貨の送金代なども高くなるため使いにくくなります。
ビットコインを例に上げると、送金手数料は0.0001BTC~0.001BTC程度必要です。1BTC=50万円ならば送金手数料は50円~500円程度で済みます。
しかし1BTC=100万円になると送金手数料は100円~1,000円になってしまうわけです。

そこで仮想通貨は手数料を下げるために大きく2つの方法を開発しています。
ひとつはシステムによって手数料そのものを下げる方法、もうひとつが仮想通貨とガスを切り離す方法です。
システムで手数料を下げる方法としてはライトニングネットワークの開発が進められています。

ただしこちらはセキュリティの脆弱性やアクセス集中などの問題があり、まだ実用に向けて時間がかかります。一方仮想通貨とガスを切り離す方法は、既にネオ(Neo)・オントロジー(Ontology)などいくつかの銘柄で実装されている方法です。

仮想通貨とガスを切り離した銘柄

中国のイーサリアムと称される仮想通貨ネオでは、基本となる仮想通貨ネオとネオのガス専用のネオガス(GAS)という2種類の銘柄が存在します。
ネオで新しくブロックが生成されるとネオ1億枚に対して8GASが生み出されるという仕組みです。

ネオを所有していれば、ネオガスも自動的に保有出来るという仕組みになります。
ネオとネオガスには明確な違いがあります。
ネオは総発行枚数1億枚で約7,000万枚が循環サプライとして計算されています。

2019年9月段階の価格は1NEO=950円~1,000円程度です。
これに対しネオガスは総発行枚数1億枚で約1,000万枚が循環サプライとして計算されています。2019年9月段階の価格は1GAS=150円前後となっています。

総発行枚数はともに1億枚ですが使用用途を明確に分けることによって、ガスの価格を抑えることに成功しました。時価総額を見ても、50倍近い差が生まれています。
ネオとネオガスは上場している取引所も異なります。

コインビーン(CoinBene)・ビットマート(BitMart)ヒットBTC(HitBTC)・エルバンク(Lbank)などが主な大手取引所です。一方ネオガスはバイナンス(Binance)・フォビグローバル(Huobi Global)・ビットゥルー(Bitrue)などに上場しています。
オントロジーもネオと同じような仕組みを導入しています。
基本となる仮想通貨オントロジーとガス専用のオントロジーガス(ONG)の2銘柄が存在し、オントロジーで新しいブロックが生成されるたびに5ONGが生み出されます。

なおオントロジーの総発行枚数10億枚で2019年9月段階の相場は1ONT=約75円です。
オントロジーガスは総発行枚数10億枚、2019年9月段階の相場は1ONG=約20円程度となっています。
こちらもネオほどではありませんが、ガスの価格を抑えています。

ガスのメリット・デメリット

ガスのメリットは任意に支払う額を増やすことが出来ることです。
取引所やウォレットによって認められている必要がありますが、ガス代を増やすことで送金を早めることが出来ます。

ただしガス代を最小まで減らすと送金が大幅に遅くなることもあります。
ガスのデメリットは価格が不安定なことです。
基本となる仮想通貨とガス専門が分離している銘柄であっても、価格は一定ではありません。

このため場合によっては送金額より送金手数料の方が高くなることもあります。
また仮想通貨に慣れていない人にとってガスの仕組みは敷居が高いです。
特にネオやオントロジーのようなガス専門の銘柄は難解です。これもデメリットになるでしょう。

まとめ

ガスは法定通貨の手数料に近い概念ですが、ユーザーが自ら手数料を上げることで送金を早めるなど独自の特徴もあります。
ただしガスの考え方は仮想通貨特有のものであり、現状あまり一般的なものではありません。
ガス代を軽減するために各銘柄は、システム自体の見直しやガス専用の仮想通貨の誕生などが行われています。
ただしどちらにもデメリットがあり、現状どちらが有利とは言えません。