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カストディサービスとは

カストディサービス(Custody Service)とは、資金を管理するサービスです。暗号資産だけではなく、金や株でも提供されています。日本ではまだ普及しているとは言えませんが、世界では20を超える企業がカストディサービスを行っています。今回はカストディサービスについて解説します。

カストディサービスとは

カストディとは、ユーザーの資金・有価証券などの保管や管理を行うことです。このようなサービスを提供している機関をカストディアンと言います。

元々は暗号資産のために登場したサービスではありません。有価証券を中心として考案されています。そのため元利金や配当金の管理、有価証券の取引に必要な手続きの処理などもカストディサービスの一部となっています。

従来のカストディサービスと暗号資産向けカストディサービスの違い

従来のカストディサービスと暗号資産向けカストディサービスの違いはセキュリティです。従来のカストディサービスでも資金の管理は重要です。しかし暗号資産を管理する上では秘密鍵をどのように管理するのかが最重要項目になります。

暗号資産向けカストディアンが増えつつある理由

暗号資産向けカストディアンが増えている理由として、信頼出来るカストディアンが存在していないことが理由に挙げられます。有価証券や金などのカストディサービスは、アメリカのニューヨークにあるJPモーガンやイギリスのロンドンに本社のあるHSBCホールディングスなどがあります。

これらの金融機関は、共に設立から100年以上の時間を経過しています。加えて複数の国や地域に支店を開いており、世界的にも認知度が高いです。この歴史と知名度の高さが信頼へと繋がっています。

しかし暗号資産自体の歴史が浅く、暗号資産向けカストディアンも誕生して間がありません。知名度の面から見ても、まだ世界規模に広がっているカストディアンも存在しないのが現状です。

これは同時に今後に発展性があるということでもあります。大きなシェアを獲得している企業もないため、競争が激化しているところです。

暗号資産向けカストディサービスを提供している金融機関

アメリカを中心とサービス展開している暗号資産取引所コインベース(Coinbase)やジェミニ(Gemini)はどちらもカストディサービスの提供を行っています。

取引所以外でカストディサービスを提供しているところとしては、ビットゴー(Bit Go)などが存在します。

コインベース・カストディとは

コインベースのカストディ部門であるコインベース・カストディでは、20195月に預かっている暗号資産が総額で10億ドル(1,090億円)を超えたことを発表しました。また8月には資金管理サービスを提供しているザポ(xapo)から法人向けの暗号資産カストディサービス事業を5500万ドル(59億円)で買収しています。

なおコインベースとともにザポは、フェイスブックの提案しているデジタル通貨リブラ(Libra)のパートナーとなっています。

またコインベース・カストディは、大手の保険ブローカーであるエーオン(Aon)と交渉しているという報道が出ています。カストディであっても取引所と同様に、ハッキングや資金流出などの危険性を忘れてはいけません。エーオンとの交渉は、このような危険性への対策と見られています。

ジェミニ・カストディ

暗号資産長者で知られるウィンクルボス兄弟が創業したジェミニでも、ジェミニ・カストディというカストディサービスを20199月にローンチしました。

ジェミニ・カストディの公式サイトによると顧客の資金は、マルチシグを使ったコールドウォレットに保管されているようです。

またビットコイン・イーサリアム・ビットコインキャッシュ・ライトコイン・ジーキャッシュの5銘柄に加えて、ERC20トークンであるベーシックアテンショントークン(Basic Attention Token/BAT)・ダイ(DAI)・メーカー(Maker/MKR)・ブレッド(Bread/BRD)・マナ(MANA)・エンジン(Enjin/ENJ)など複数の銘柄に対応していることが特徴です。

ビットゴー

コインベースやジェミニとは異なりビットゴーは、独自の取引所を持っていません。代わりに独自のコネクションを生かしているところが特徴といえます。

201810月にビットゴーは、アメリカのニューヨークに本社のある大手金融会社ゴールドマン・サックスグループおよびギャラクシー・デジタル・ベンチャーズから約1,500万ドル(162,000万円)の出資を受けていることを発表しました。

20192月にビットゴーは、イギリスのロンドンに本社のある保険会社ロイズと提携しており、最大1億ドル(108億ドル)の保険にも加わっています。

まとめ

これまでにもカストディサービス自体は存在しました。しかし暗号資産向けのカストディサービスは、従来のカストディサービスとは異なる側面が存在します。保管方法や保険への加入などでユーザーの確保や機関投資家の参入を促している状態です。

カストディアンが計画しているように機関投資家の参入が増えていけば、今後もカストディサービスの質や種類は一層向上していくことでしょう。