COLUMN(コラム)

投げ銭に見られるブロックチェーンの優位性

近年クリエイターに対する評価方法のひとつとして投げ銭が注目を集めています。動画サイトのユーチューブ(YouTube)でもスーパーチャット(通称スパチャ)という投げ銭機能が導入されました。投げ銭だけで1億円以上集めたという事例も登場しています。

暗号資産産業でも投げ銭に向けた取り組みが実施されています。スムーズな送金を目指すリップル(Ripple/XRP)や日本発の暗号資産であるモナコイン(Monacoin/MONA)などでも投げ銭に対する取り組みを行っています。今回は投げ銭とブロックチェーンの関係について解説します。

投げ銭とは

投げ銭とは見返りを求めずにクリエイターにお金を支払うことです。昔興行で存在していたおひねりなどに似ています。英語ではギフティング(gifting)と呼ばれています。

本来クリエイターは絵画・映像・彫像あるいは関連グッズなどを通して収入を得ていました。

しかしこれらの収入獲得手段では、多くの人や企業が関わっています。原価や時間の問題もあり、クリエイターまで分配される収入は限定的です。

また方向性の問題もあります。クリエイターがつくりたい関連グッズがあっても、グッズ開発担当の承認を得られなければグッズ展開を行うことが出来ません。実際に制作に入るまでにも多くの障害が伴います。投げ銭は、クリエイターとファンの間に入るさまざまな障害を簡略化する力があると考えられています。

投げ銭のメリット

投げ銭のメリットは、ファンの熱量を金銭という形で直接表現できることです。例えば500円の価値があるとファンが判断すれば、500円だけを投げ銭出来ます。10万円の価値があると判断すれば、10万円を投げ銭することも出来ます。ファンによって自分が判断した適正額をクリエイターにプレゼントすることが出来るわけです。

また還元率の高さも投げ銭のメリットです。本来クリエイターが作品をつくりあげるためには障害があります。また作品から関連グッズなどへ展開する時にもまた障害が発生します。特に大きな障害が収益見込みです。グッズがどれだけ売れるか、どれだけつくるべきか、企業は似たような業態の成績からこれらの数字を予想します。しかし予想が必ず当たるというわけではありません。売れ残ったグッズは在庫となり、場合によっては原価割れなどを覚悟して販売されることとなります。

投げ銭はこれらの収益見込みを判断する材料となります。投げ銭の数字は、どれだけクリエイターにファンがついているのか、ファンの中で何割がお金を出してくれるのかを表しています。クリエイターへの収益と同時に、今後のビジネス展開に繋がる大きな武器となるわけです。

投げ銭のデメリット

投げ銭には大きく2つのデメリットを抱えています。ひとつ目が不透明性です。投げ銭をしたファンの数や投げ銭した金額は、クリエイターはもちろん関連企業にも大きな影響を与えます。しかしこれらの数字は、投げ銭のプラットフォーム側が管理しています。改ざんされる可能性も否定できません。

もうひとつのデメリットは敷居の高さです。日本円のまま出来れば簡単なのですが、投げ銭をするためにはお金をポイントや暗号資産などに変えなければなりません。このような仕組みを導入しなければならない影には、資金決済法という法律があります。

日本円のまま支援が出来ないというわけではありません。クリエイター側が銀行などに口座を開き寄付を求めれば、投げ銭に近いことが可能です。しかしこのようなやり方では、手数料が大きな問題となります。投げ銭500円送金手数料100円と考えると、実質的な投げ銭額は400円です。2割が手数料となってしまうわけです。

暗号資産における投げ銭のメリット

投げ銭についての暗号資産のメリットは2つです。ひとつは暗号資産を使うことで、資金決済法に関わる障害をクリアする可能性があることです。明確な回答が出ていないために断定することは出来ませんが、クリアできればクリエイターおよび多くのクリエイターを抱えるエンターテイメント業界・音楽業界・スポーツ業界などの後押しになるでしょう。

2つ目のメリットは、ブロックチェーンを使うことによる透明性の確保です。投げ銭をする人々にとって最も大きな関心は、本当にクリエイターのもとに投げ銭が届いているかどうかでしょう。ブロックチェーンを使うことによって、この問題点を解消することが出来ます。

暗号資産における投げ銭のデメリット

暗号資産を使うことによるデメリットもあります。ひとつめは暗号資産についてのイメージです。20203月現在暗号資産に関するイメージは必ずしも良いとは言えません。投げ銭には興味があるものの暗号資産には手を出したくないという人は、投げ銭に躊躇する可能性があります。

もうひとつのデメリットが価格変動幅(ボラティリティ)の大きさです。1日の間に暗号資産は10%以上も価値が変化することもあります。土日や祝日も価格が変動するため予断が許されません。安定した収入を目指すクリエイター側が暗号資産を嫌う可能性もあるでしょう。

まとめ

暗号資産で投げ銭を行うことは、大きなメリットを秘めています。しかし一方で問題点を抱えていることも否定できません。暗号資産が社会に浸透するかどうかが大きな分岐点となるでしょう。